V36 スカイラインクーペ試乗記
(2007年11月26日記)

2007年10月2日、待ちに待ったV36新型スカイラインクーペが発売されました。このモデルも、アメリカでINFINITI G37 Coupeとして販売されているもので、先代のV35スカイライン以降グローバルに展開される車種の一つとなっています。そのため、クルマ自体のクオリティも世界レベルの開発が必要であり、レクサスやBMWといった高級ブランドに対抗できる内容が要求されます。しかも今年、2007年はスカイラインにとって特別な年、スカイライン誕生30周年の年なのです。日産自動車(株)は、2007年をスカイライン・イヤーとしたイベントを各地で展開してきました。ただ残念だったのは、そのイベントのほとんどが昨年11月に発売されたV36新型スカイラインの”セダンモデル”であったこと。クーペの発売時期がもう少し早ければ盛り上がりも倍増したことと思います。

前モデルのV35スカイラインはセダンの発売から約2年遅れでクーペが発売されました。今回のV36新型スカイラインクーペはセダンの発売から約1年遅れと、発売のタイムラグは非常に短縮されてはいるものの、セダンの市場投入、そのフィードバックは確実に反映されている様に感じます。V36新型スカイラインセダンの試乗記でも書きましたが、フーガ350GTがあまりにもスポーティーであったため、フーガよりもスポーツ指向にあるスカイラインが中途半端にならないか・・・と言う懸念を、V36新型スカイラインのセダンは見事に取り払って見せました。実は、この位置付けを固持するためにセダンとしては少々アグレッシブな仕上がりとなっていたのも事実だと思います。そのため評論家の方や年配の方からは厳しい意見もあったようですが、今回のV36新型スカイラインクーペでキッチリ対応されていると感じました。40歳代前半である私の個人的な好みでは、V36新型スカイラインセダン(4WAS付き)の走りは大好きなのですが・・・。

さて、今回発売になったV36新型スカイラインクーペですが、前モデル同様エクステリアパーツがセダンとクーペでほとんど共通のパーツがありません。雑誌などでも書かれていますが、共通しているのはアウトサイドドアハンドル、サイドターンランプのみと言うことで、まさにクーペ専用設計となっています。しかし、全体のイメージやフロント周りなどはスカイラインとしての共通イメージは保たれており、独特な抑揚感のあるフロント、フロントフェンダー周りのデザインは統一され、誰が見てもスカイラインであることが認識できます。

そしてなにより、現在販売されている国産車の中でスカイライン以外にクーペが存在しない事実があります。そうなんです!現在クーペを販売しているのは日産だけなのです!!他の国産メーカーが手を出さないカテゴリーを、日産は共通パーツの流用を避け、あえて専用設計で取り組んでいること自体にこのV36新型スカイラインクーペへの期待感は隠しきれないものがあります。

V36新型スカイラインクーペは全て3.7リッターのVQ37VHRエンジンを搭載、標準の「370GT」を基本とし、本革シートなどラグジュアリー系の「370GT Type P」、4WAS(4輪アクティブステア)を標準装備するなどスポーツ系の「370GT Type S」、ラグジュアリーとスポーツを兼ね備えた「370GT Type SP」の全4モデルの構成となっています。

今回試乗させていただいたのは、「370GT Type S」で、19インチホイールを装備し、V36セダンではオプション設定であった4WAS(4輪アクティブステア)が標準装備となったモデルです。また、基本的な性能はV36新型スカイラインセダンと共通であることから、2006年12月記の「V36スカイライン試乗記」(バックナンバーより)を最初に読んでいただくとより納得していただける事と思います。

■駆る喜びを期待させる抑揚感

実車を目の前にしたとき、やはりそのデザインに感心させられてしました。抑揚感のあるフロント周り、流れるようなボディーライン、特にルーフからリアに流れるラインはクーペの専売特許と言っていいほど美しい仕上がりとなっています。ルーフラインだけ見て一日過ごせそうなほど・・・と言っては過言ですが、見ていて飽きることがありません。更にTV-CFで新型スカイラインクーペ(V36)はレッドがイメージカラーの様ですが、この車格でレッドが似合うクルマもまた少ないと思う反面、これくらいインパクトのある色さえも吸収してしまうほどデザイン性に富んだものだと感心しました。また、新型スカイラインクーペの大きなドア、このドアの大きさはクーペにしかないデザインであり、開けたときのボリューム感も並ではありません。もちろん後部座席へのアクセスも考慮されてのこととでしょうが、AピラーとBピラーの距離関係など、デザイン面で特に重要なファクターの一つとなっています。
更に、ドライバーズシートからドアミラーに映るリアフェンダーが、とても高い位置に確認できます。これはこのクルマのデザインがリアからフロントへ前傾のプロポーションであるためで、ダッシュボードからドアのライン、そしてミラーに映るフェンダーを眺めると、このクルマがデザインを重視した独特なクルマであることを理解することができます。車内からもエクステリアの抑揚感を感じ取れるほど卓越したデザインということでしょう。クーペには無駄なものが必要であったり、無駄に思えるものが重要だったり・・・逆に見ればクーペにおいて無駄なものは無いということかも知れません。

もともとクーペ自体が感性を売るクルマであり、運動性、美しさ、エレガンスさ・・・全てが高い次元で融合して初めて完成度の高いものとなります。ここがかっこいい!というディテールの美しさもさることながら、全体の雰囲気やクルマ自体の存在、イメージを感じることができるものでないと意味が無くなります。その辺り、新型スカイラインクーペ(V36)の存在感は抜群のものとなっています。

■セダンと共通デザインのインテリア

前回試乗したV36セダンのシートポジションは比較的高めであり、ダッシュボードの位置が低めであるとレポートしましたが、このV36クーペでは逆にシートポジションに対するダッシュボードやメーターの位置が高く、シートポジションがセダンよりは低く設定してある様です。セダンのシートがゆったりと座るタイプのシートに対して、クーペのシートがセミバケットタイプのシートであるため、ヒップポジションがセダンよりは少々低くなっているためそう感じるのかも知れません。この結果、車高の低いクルマに乗っている様に感じますが、実際のクルマ全体から見たシートポジションは意外に高い位置にあるため、乗降時に苦労するといったことはありませんでした。

インテリアはセダンと共通デザインとなります。セダンのデザインをそのままクーペに流用と考えると少々疑念を持ちますが、それは先代のV35スカイラインの話、この新型スカイラインは逆にクーペのデザインをセダンに採用したかの様なスポーティーなデザインとなっていますので、セダンはもちろんクーペのエクステリアデザインに対しても決して引けを取らないインテリアデザインとなっています。クーペというクルマはエクステリアデザインだけ頑張っても100%とは言えず、V35クーペで成し得る事ができなかった事が遂にこのV36クーペで完成形となりました。座った瞬間からスポーティーなクルマに乗ったと言うことをインプットされると共に、スカイラインらしいラグジュアリー性が十分に感じられます。また、センターコンソールが大きく、FRであると言うことを強く印象づけると共に、運転席と助手席がしっかりと分かれていて、コックピットに収まっているという感覚もありました。

先代のV35クーペで残念だったのが、パドルシフトが採用されなかったことなのですが、新型スカイラインセダン同様、クーペにも採用されました。アルミ製パドルシフトは、通常運転で決して多用しないとは思うのですが、ドライバーに対して一種独特の特別感を与えています。先日、先代(V35)のセダン、パドルシフト(GT-8)を運転したのですが、新型ではパドルシフトのレイアウトが大幅に見直されているようです。前モデルの物は操作時にワイパーのレバーと若干干渉する場面があったのですが、新型スカイラインのパドルシフトでは全くそのようなことはありませんでした。誤動作しない様な位置関係、干渉しないサイズに変更されているようです。

新型セダン同様、車内は静かで、普通に走っているとエンジン音もさほど気になることはありません。しかし、一度アクセルを踏み込むと途端にその表情は変わり、VQエンジンのトルクフルで抜けの良い心地よい音が響きます。

■HRエンジンに、更に新技術を投入!VQ37VHRエンジン

新型スカイラインクーペ(V36)は全てV型6気筒DOHC自然吸気3.7リッターの「VQ37VHR」エンジンを搭載しています。新型スカイラインセダンでは2.5リッターの「VQ25HR」と3.5リッターの「VQ35HR」でしたが、クーペでは全車3.7リッターエンジンとなりました。更に、セダンで採用されたHRエンジンは「High Revolution(高回転)」「High Response(高応答性)」の略で、シリンダーブロック、ピストン、ベアリング、吸排気系、カムシャフト制御など、性能向上にかかわるほぼすべての部分が新設計となったものでしたが、クーペでは更に新技術が投入されました。エンジン形式の「VQ37VHR」からも判断できる様に、「HR」の前に「V」が追加されています。この「V」は、「VVEL(ブイベル)システム」。この「VVEL(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)」採用によりより高回転、高レスポンス、さらにはクリーン性能も向上すると言うことで、パフォーマンス的にはセダンと一線を引いた形となりました。

実際、クルマの動き出し自体機敏とは言えませんが、走行中の動作にはレスポンスよく反応するエンジンであると感じました。しかし、高出力エンジンであるにもかかわらず決してアグレッシブなものではなく、どちらかというと「俊敏さが抑えられていて大人の動きを演出」しているようです。もちろん、「VQ37VHR」エンジンのパワーは十分であり、7000回転超えまでストレス無く回り、加速、レスポンス共に他を圧倒します。まさに「余裕」の一言に尽きます。しかし、普段、333馬力をフルに使うことは少ないでしょうし、クルマの性格上アグレッシブな走りを求めるシチュエーションも少ないでしょう。優雅に余裕を持った「羊の皮をかぶったオオカミ」的存在で十分と感じます。

■うれしいパドルシフトの採用

新型スカイラインのトランスミッションは5AT、パドルシフト付き5AT、6MTが設定されています。先にも書きましたが、先代のV35スカイラインではセダンでパドルシフトが採用されたにもかかわらずクーペでは不採用となりました。クーペでこそほしい装置ではないかと思うのですが、セダンでパドルシフトを選ぶ人が少なかったことを理由に、クーペで不採用になったとの事でした。チョット納得のいかない理由ではありますが、新型スカイラインでは無事(?)に採用となっています。更に、先代のパドルシフトは8速ATであったのに対し、新型は5速。5MTの感覚とリンクしやすく、直感で操作できるのに好感が持てました。

実は、先代のV35スカイライン開発に携わった方とお話をする機会があり、パドルシフトを装備したセダンの販売状況からクーペへの不採用が決定したことを聞きました。さらに、8速のパドルシフトを操作した際、1段毎のシフトアップ、シフトダウンではその変化を感じることが少なく、ハイポジションでは無意識に2速ピッチでのシフトチェンジをしてしまう、結果5速とあまり変わらない使い方をしてしまう事実をお話しし、先代のモデルが何故8速であったかかを聞いてみたところ、もともとCVTであるため何速にでも設定できたそうなのですが、7速くらいではドライバーが数えてしまう、9速以上だと何速か把握しづらい・・・とのことで8速に設定したそうです。今一理解に苦しむ内容ではありましたが、新型スカイラインではフルレンジ電子制御ATと言うこともあり無事(?)5速に収まったようです。

■新型スカイラインセダンより更に磨きをかけた足回り

新型のスカイラインセダンの足回りは非常にアグレッシブであり、オプションであった4WAS(4輪アクティブステア)の性能が際だっていました。大きな車体をいとも簡単に曲げてしまいシッカリと地面にトラクションを伝えていました。FRらしさ、フットワークの良さは素晴らしいものであったと記憶しています。そのためハンドリングがシビアで、路面状況がステアリングにダイレクトに伝わってくる感覚がスポーツカーに近いものであったのも事実です。先にも書きましたが、40歳代前半である私の好みにピッタリ!はまったのですが、今回の新型スカイラインクーペは、少々味付が違いました。と言うのは、少々アグレッシブさが抑えられ、トゲが無くなった様な感覚に仕上がっています。セダンの場合、低速から高速の全域で堅めの足回りであると感じましたが、このクーペでは低速時において特に堅い足回りという意識がなくなりました。しかし、高速走行に入った時にはやはり堅い足回りなんだと再認識することになりますが、ユックリ優雅に、速くシッカリ・・・理想的な足回りのように思えます。とは言うものの、他社の同サイズのクルマからこのクルマに乗り換えた年配の方は、「クッションが悪い」なんてコメントがあるかも知れません。昔の道は今ほど整備されておらず、ゴツゴツした道をフワフワ走るクルマが「クッションの良い良いクルマ」とされていた時代もあり、その感覚を未だに引きずっている方も少なくはありませんからね。

セダンでオプション設定であった4WAS(4輪アクティブステア)が、クーペでは「Type S」「Type SP」に標準設定となりました。この4WAS(4輪アクティブステア)、ドライバーの操縦パターンを徹底的に研究し、スポーティドライブの邪魔にならないようセッティングされているそうですが、実はセダンのものと少々セッティングが変更されているようです。クーペの場合、セダンよりマイルドな仕上がりに変更したとのことで、クーペの足回りにトゲが無くなった様に感じる一つの要因なのかも知れません。そもそもセダンの場合、この4WAS(4輪アクティブステア)がオプション設定であり、ユーザーは追加料金を支払ってわざわざ取り付けるのですから、その効果を少しでも実感したいものです。そのためメーカーサイドとしても少々強めの味付けをしていたそうで、クーペにおいては標準装備となることから、運転に気にならない程度までセッティングし直したとのことでした。

ブレーキの効き方は最近の日産車とは少々違う感覚でした。最近の日産車はペダルの踏み始めから利き始める物が多いのですが、このクルマはペダルの奥でグッと利く感じでした。このブレーキの効き方は昔の日産車に多く、Zで言うとZ32、スカイラインで言うとR32辺りの感覚に近いようです。もちろんブレーキ性能としては格段に進化しているのでしょうが、フィーリングがそのような感じであったと言うことです。

■スピード感を感じない高速走行
高速走行時、実際のスピードよりもスピード感を感じませんでした。それほど足回りが良いんでしょうし、エンジンのパワーからくるゆとり、音の静かさなどなど、様々な要因があると思いますが、ダッシュボード等の高さから低いと感じるシートポジションより、実際のクルマに対する視点の高さが高いため、スピード感を軽減しているのではないかと思います。また、高速走行でもシッカリとした安定感がありコーナリング時も自分の思い描いているラインを正確にトレースする足回りの良さがあります。ドライバーに余計な神経を使わせない素直なハンドリングはドライバーの疲労も軽減することでしょう。高速走行時、無意識(自然)にスピードが出ている場合があるのでご用心あれ。
■ユックリ走ってみようかという衝動に駆られる一般道
一般道(山道)エンジン音も静かで車内の静粛性は高く、高速走行で少し発生していたロードノイズも気にならないほどでした。足まわりもハードなセッティングなのですが、路面の段差も十分に吸収しているようです。また、車両感覚よりも意外に幅が広く、左に幅寄せする場合に意識よりも実際のクルマが数センチは左側に寄っていることが多いようでした。スタイリッシュなクーペ、大人しくついついユックリと走ってみたくなる衝動に駆られます。
■新型スカイライン開発に携わった方からお話しなども・・・

縁あって新型スカイラインセダン、クーペの開発に携わった方からお話しを伺うことができました。
スカイラインのキャッチフレーズ、「SHIFT_passion」、スカイラインはときめきをシフトする。これはセダンとクーペ、共通のものです。しかし、新型スカイライン クーペは、従来の「スカイライン セダン」で目指してきた世界トップクラスの“魅惑・洗練・高性能”というコンセプトをさらに高めた、「超魅惑・超洗練・超高性能」を商品コンセプトとして開発されました。と、お話を伺えたのは日産自動車(株)商品企画室の渡辺さんです。

スカイラインの初期コンセプトを継承しつつ、セダンから採用した新プラットフォームを更に成熟したとのことでした。特にFRへの拘りは、スカイラインの父こと櫻井眞一郎様が自然から教えられたことにが発想の原点であったそうです。櫻井氏は、「4本足の生き物は、後ろ足が太く、前足が細い。後ろ足で蹴っ前足で操舵するという自然の教えに従うことで、安定した走りを実現しました。4輪操舵システム「HICAS(ハイキャス)」は、競馬場でコーナーを駆け抜ける馬の足の運びが発想の原点です。」と、スカイラインはFRにすることで犠牲になる室内空間よりも、走りへの拘りを選んで来たそうです。もちろんデザインや居住性においても「止揚の美学」(対立する二つの事柄を容易な妥協ではなく。高いレベルで解決すること)が最重要理念として揚げてきたことは言うまでもありません。特に新型スカイラインクーペでは、クーペらしいスタイルを出すために、高さを抑え、そのための新技術(ポップアップボンネット)の投入も行ったとのことでした。更にセダンとクーペの違いとして、エクステリアパーツでセダンとクーペの共通部品はドアノブとウインカー程度と、まったくの専用設計なのは周知の通りですが、セダンよりもトレッドを広げ車高を抑えることでセダンよりも更に安定した走りが実現したとのことです。

どんな人に乗ってほしいか?と言う問いに対し、本物が分かる人にも十分期待に応えられる完成度を持っていますので、クルマへの拘りを持つ人には特に一度乗ってみてほしいと、若くても、良い物は良いよねと言っていただける方にも自信を持ってお勧めすることができる商品であると回答を頂きました。

■こんな可能性も?
私が初めて新型スカイラインクーペを目にしたとき、オープンが似合うクルマだと感じました。スカイラインクーペですから、当然ハードの電動オープン。ルーフの流れる様なラインを残したままオープンができれば・・・と考えると、ついワクワクしてきました。このことを渡辺さんにお話ししたところ、現在開発されているかどうかは答えられませんが、大人のオープンカーというカテゴリーにおいて選択肢の一つではあるとの事でした。さてさて、可能性はあるのでしょうか?
■日産にはこんなクルマがある!と言う誇り
先にも書きましたが、現在発売されている国産車でクーペと呼べるクルマは、今回の新型スカイラインクーペだけで、しかもその内容は北米をメインマーケットとするほど、グローバルな視点から見ても通用する完成度の高いものとなっています。考えてみれば日産には日本を代表するクルマが数多くあります。日本を代表するスポーツカーとして「フェアレディZ」、更に日本を代表する市販車レベルのレーシングカーとして「NISSAN GT-R」、そして日本を代表するクーペとして「スカイラインクーペ」。日産はクルマを単なる便利な道具としてでなく、もっと深い意味で捉えているからこそ明確なコンセプト、逸れないもの造りができるのでしょう。ハイブリッドカーでは出遅れた日産ですが、他社にない素晴らしいクルマが日産にはあります。これらのノウハウは、作り続ける限り確実に積み上げられ、歴史となり技術となります。走りを楽しむクルマ、所有する喜びがあるクルマが日産には多いですね。
■スカイラインとGT-R
元々は「スカイラインGT-R」と言うネーミングの通りスカイラインのスポーツバージョン、レーシングバージョンとして企画され、日産のレースの歴史において数々の栄光を納めてきたことは周知のことでしょう。しかし、先日の東京モーターショーで日産はスカイラインの系列からGT-Rを独立させ、新たにNISSAN GT-Rとして投入することが決定しました。(スカイラインの形式が「R」から「V」に変更された時点で決まっていたのかも知れませんが?)スカイライン=日産のレース史というユーザーイメージに終止符を打つ結果となる事に関し私も少々疑問を持たずには居られませんでしたが、スカイラインクーペが発売され、その後の東京モーターショーで発表されたNISSAN GT-Rの内容を見て、GT-Rが全く違う次元のクルマになったことを知り、明確なコンセプトを貫くにはこれもまたやむを得ないと思ったのも事実です。スカイラインGT-Rであったころは、「羊の皮をかぶったオオカミ」だとよく言われていましたが、それはスカイラインというスポーティではあるものの、ラグジュアリーな要素を持つクルマにハイパワーのエンジンを与えレーシング仕様に仕上げたものであるためであり、逆にそういうことから考えると、GT-Rにはスカイラインの持っていたエレガンスさやラグジュアリー性は必要ないと判断した当然の結果なのかもしれません。新しいGT-Rは、明確なコンセプトと言うレベルを超え、単一コンセプトの下で作り上げられた別格のものとして生まれ変わるために必要であったのでしょう。少々残念で寂しい話ではありますが、これもまたスカイラインの一つの歴史として刻み込まれることとなります。
■新型スカイラインクーペの性能って・・・
私が思うに、R34までのスカイラインGT-Rの性能に近いものをこの新型スカイラインクーペは持ち合わせているのではないか?と感じています。さすがに4WDなどのトラクションコントロールは存在しないですし、GT-Rほどアグレッシブなセッティングは行われていないのですが、それに近い性能、もしくはそれ以上の性能は十分発揮できる領域ではないでしょうか。「スカイライン=レース」の関係は無くなるかも知れませんが、新型スカイラインクーペを見る限り、「スカイライン=高性能」のイメージは紛れもなく受け継がれているようです。
■そうです、クーペは贅沢品です!
クーペというクルマは間違いなく贅沢なクルマでしょう。しかも、どちらかというと遊びや趣味のクルマに見られがちなのですが、新型スカイラインクーペは大人のクーペであるが故に、その使い勝手も幅広くエレガントに使うことも可能では無いでしょうか。例えばビジネスシーンにおいて空港やホテルに一人のお客様を迎えに行くというシチュエーションの場合、この新型スカイラインは決してチャラチャラした遊び車ではなく、逆にオシャレな演出ができるの最高のアイテムになると思いませんか。ビジネスシーンでも華麗に演出することが可能な大人のクルマ・・・逆な立場から、このクルマで迎えに来ていただいた場合を想像すると、乗せてもらう立場であっても高揚感や相手に対する興味が高まるクルマ・・・どのようなシチュエーションでも、人としての余裕を感じさせる贅沢なクルマなのです。